私は医師ではなく、また自分自身がうつ病を経験したわけでもありません。
そのため、本当の苦しさや心の奥深い部分までは分かっていないかもしれません。
これまで何人かのうつ病の方と関わってきて、共通して感じたのは、とても頭の良い方が多いということでした。
物事を深く考えられる。
細かな違和感にも気づける。
分析力が高く、周囲への気配りもできる。
本来なら大きな長所になる力ですが、強い能力は時に自分自身を追い込む方向にも働きます。
本来なら大きな長所になる力ですが、強い能力は時に自分自身を追い込む方向にも働きます。
たとえば体力に自信がある人ほど無理を重ねてしまったり、直感に優れた人ほど感覚だけで突き進んでしまったりすることがあります。
それと同じように、考える力が強い人ほど、頭の中で作り上げた世界に疲れてしまうことがあるように感じます。
そして、もう一つ強く感じたことがあります。
それは、多くの方が「体を強く緊張させている」ということです。
首、肩、背中、腰…。
全身がずっと力んでいて、休まらない状態になっている方がとても多いのです。
本人にとってはそれが当たり前になっているので、自覚がないことも少なくありません。
でも、体の緊張は単なる「コリ」ではありません。
筋肉が硬くなると、血流や神経の働きにも影響します。
すると、体のさまざまな機能が少しずつ乱れやすくなります。
たとえば首まわりが強く緊張すると、唾液が出にくくなったり、呼吸が浅くなったりすることがあります。
さらに、自律神経やホルモンのバランスにも影響して、気分の波が大きくなることもあります。
心と体は別々ではなく、想像以上につながっているのだと思います。
うつ状態にある方を見ていると、
「動きたくない」
「何も考えたくない」
「どうにもできない」
そう感じるのは、むしろ自然な反応なのではないかと思うことがあります。
長い時間をかけて体も心も張り詰めてきたなら、急に元気に動けなくなるのも無理はありません。
だから、「こんな自分はダメだ」と責め続ける必要はないのではないでしょうか。
むしろ、
「今は体が休もうとしている時期なんだ」
そんなふうに捉えてみることで、少しだけ自分への見方が変わるかもしれません。
もちろん、考え方だけで全てが変わるわけではありません。
だからこそ私は、体を整えることを大切にしています。
心は過去や未来へ飛び回りますが、体は今ここにある「現実」です。
そして体は、丁寧に向き合えば少しずつ変化していきます。
焦らず、無理をせず、呼吸を深くする。
硬くなった体を少しずつゆるめていく。
そうやって体が安定してくると、不思議と心も少しずつ落ち着きを取り戻していく。
治療の現場では、そんな場面を何度も見てきました。
これはあくまで、治療家として現場で感じてきた一つの考えです。
もし今つらい状態の中にいる方がいたら、
「心だけが悪いわけではない」
という視点も、どこかで思い出してもらえたら嬉しく思います。