実は私自身も、かつては体調不良に悩む一人の患者でした。
もともと私は料理人として働いていました。
昼も夜も厨房に立ち、忙しい毎日を送っていましたが、その頃から少しずつ自分の体に異変を感じ始めていました。
疲れが抜けない。
集中力が続かない。
思うように体が動かない。
味覚、嗅覚が鈍い。。。
好きな仕事でしたし、いつかは独立したいという思いもありました。しかしその一方で、「この体ではあと10年も続けられないかもしれない」という不安が日に日に大きくなっていきました。
体調が悪くなると仕事でのミスも増えます。
感覚は鈍り、やる気はあるのに体がついてこない。
気分を上げようとお酒を飲み、さらに体調を崩す。
体もつらい、心もつらい。
そんな負の連鎖の中で、将来に希望を持てなくなっていました。
ちょうどその頃、修業を終えた父が治療院を開業しました。
そんな私を見かねてか、父から
「一緒に仕事を手伝いながら、体も治してみないか」
と声をかけられました。
正直なところ、その時は治療の仕事に興味があったわけではありません。
ただ、このままではいけないという気持ちもあり、実家へ戻って治療院の受付などを手伝うことになりました。
それから定期的に骨盤調整を受けながら、ゆっくりとした生活を送るようになりました。
しかし、自分では特に変化を感じません。
体調は相変わらず悪い気がするし、人生も停滞したまま。
そんな状態で一年ほどが過ぎました。
ところが、ある日ふと気づいたのです。
「あれ?なんだか体が楽かもしれない」
それは劇的な変化ではありませんでした。
けれど少しずつ振り返ってみると、以前とは違うことがたくさんありました。
毎年、季節の変わり目になると必ず風邪をひいていたのに、この一年は一度もひいていない。
いつも悩まされていた腰の痛みも気にならない。
朝起きるのも以前ほどつらくない。
そういえば最近、体のことばかり考えなくなっている。
そんな小さな変化が積み重なっていたのです。
今ならよく分かります。
人は「つらいこと」はすぐ気づくのに、「楽になったこと」は意外と気づけません。
痛みがある時は強く意識するのに、なくなってしまうとそれが当たり前になってしまう。
患者さんにもよくお話しするのですが、私自身もまったく同じでした。
だから長い間、
「まだ良くなっていない」
と思い込んでいたのです。
自分の変化に気づいた時、心から驚きました。
そして初めて、
「人生ってこんなに明るく感じられるものなんだ」
と思えたのです。
同時に、この骨盤調整という治療の力にも強く興味を持つようになりました。
「自分の体質だから仕方ない」
「もう治らない」
そう諦めていたことが変わる。
それは私にとって、とても大きな出来事でした。
そこから私は治療の道を志し、国家資格を取得するために専門学校へ進学しました。
そして治療師として本格的に働き始め、現在に至ります。
患者さんの中には、
「年齢だから仕方ない」
「昔からこうだから」
「もう変わらない」
と話される方が少なくありません。
でも私は、そんな言葉を聞くたびに昔の自分を思い出します。
体調を崩し、将来への希望を失いかけていた頃の自分を。
だからこそ伝えたいのです。
今はつらくても、自分自身を見放さないでください。
体が変われば、見える景色も変わります。
私自身がそうだったように、人生がもう一度動き出すこともあります。
そのお手伝いができることを、私は治療師として何より嬉しく思っています。